The moon and a shuttlecock


(1) ~*R18~


 窓からさしこむ青白い光が、床板に、格子の影を作っている。
 海と、空と、風。
 時おり、巣に帰りそこねたのか、鳥の細く短い鳴き声が聞こえてくる。


 夢中でハレルヤを突きあげていたアレルヤが、急に動きを止めた。
 息を詰め、窓のほうへ視線をやる。
 月明かりの細い筋を避けるようにして、かすかに、これまでとは違うなにかの気配が射し込んできていた。
「…あ…?」
 涙を浮かべたハレルヤが、ぼんやりとアレルヤを見上げた。
 荒い呼吸と、唇の端からこぼれて流れ落ちている唾液。
 まだ欲しいとばかりにひくつくその口にアレルヤがそっと左手をあてると、状況を察したハレルヤは、アレルヤにまわしていた腕を解いた。
 こうやって、何度もふたりで生き延びてきた。
 アレルヤは、シーツを引き寄せてハレルヤのからだを隠すと、そっとベッドの下に腕をのばし、銃をとり、安全装置をはずす。
 ハレルヤも、あがった息をひそめ、家の外へと感覚器官を向けた。
 耳を澄ましても、波の音がするだけだ。
 アレルヤもハレルヤも、からだを繋いだまま、息を殺して、窓を凝視する。
 その外から伝わってくる、こちらを探るような、敵意とも殺意ともつかない、棘のような圧迫感。
 かなり腕のたつ人間の気配だった。
 複数ではなさそうだ。
 近づいてくる。
 アレルヤが、銃口を窓にむける。
 窓ガラスは厚手の丈夫なものに取り替えてはあるが、防弾にはしていない。いざというとき、窓を割って外へ飛び出すためだ。
 鳥の鳴き声が、屋根の上を横切るのが聞こえた。
 と同時に、突然、その棘のような感触が、ふっと消えた。
 一瞬、鳥の鳴き声に注意を逸らされて、気が抜けてしまったかと後悔した。
 変わらぬ月明かり。
 そして。
「…え?」
「…ぁあ!?」
 突然、ふたりが見ていた窓に映った、男の姿。
 驚いた様子で、こちらを見ている、その顔。
 見憶えのある特徴に、アレルヤの脳がぎりぎりで反応する。
 寸でのところで、引き金を引きかけた人差し指を止めると、アレルヤは目を瞠った。
「…ま、まさか…──」
「? ──アイツ…!?」
 男がすこし動いたことで、月明かりが、その姿を鮮明に浮かび上がらせる。
 周りの木々の深碧を映すような肌と、深みをたたえて光る瞳。くるりと跳ねた、やわらかそうな髪。
「ギャーッ!」
「ロックオン…!?」



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