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(6) ~R18~


 ハレルヤの両足を限界までひらいて、その中心にアレルヤはペニスを捩じ込んでいる。
 まるで、ハレルヤのなかに、ぼくを全部入れて、とすがっているように。
 奥へ、もっと奥へ。
 膨れあがった亀頭が、えぐるようにして、ハレルヤの芯を啼かせる。
 ハレルヤは、一度もアレルヤを拒むことなく、すこしの抵抗もすることなく、痛みも快楽も、アレルヤがすることすべてを、まっすぐ受け止めていた。
 必死にあがいているうちに、いつのまにか、おとなのからだになっていた自分たち。
 持っているものは、いつだって、お互いの存在だけだった。
 アレルヤにはハレルヤ、ハレルヤにはアレルヤ。自分たちが確かに手にしているのは、それだけだ。
 お互いの存在を知ったときから、お互いを感じすぎるほどに感じていたふたりが、セックスをするようになったのは、ごく自然の流れだった。
 ハレルヤはというと、初めての晩、アレルヤの真剣さにすっかり圧されて、朝になってから、逆だと思ってたのによ、と怒っていたが……。
「…ねぇ、ねぇ、」
 アレルヤが、甘い声でハレルヤの意識をひき戻した。
「…気持ち、いい?」
 すでにその格好のまま何度か昇りつめて、もう嬌声をあげることもできずに、アレルヤに突き上げられるたび、短い息をもらしていたハレルヤは、目だけを動かしてアレルヤに返事をする。
 もう長いこと、腕はアレルヤを抱くことなく、自分の頭の両側で、枕の端を力なくつかんだままだ。
「おかしく、なり、そ…だ、」
「うん、ぼくも…」
 シャワーで暖まったからだは、さらに熱をあげて、汗をかき続けている。
 つながっているところからは、アレルヤが出入りするたびに白い液体がちいさく飛沫をあげ、肉と肉がこすれ、重くぶつかりあう淫猥な音がもれ続けている。
「これ…、毎日、は…ぜってー…無理…」
 泣き言のようにつぶやくハレルヤに、アレルヤが腰をとめられないまま、笑った。
「明日、は、もすこし、やさしく、するから、」
「マジ、…かよ、ぉ…」
「今日、は、まだ、したい」
「…うそ…だ…ろ……」
 もう意識がたもてないのか、金色の目は今にも閉じそうだ。
「ハレ、ルヤ」
「…ん……」
「ハレ、ル、ヤッ」
 アレルヤの左目から、涙が一気に顎までつたった。
「こん、な…、ことで、しか、つながれっない、なんて…っ」
「…なに、…言ってん…だ…」
「ハレ、ルッ、ヤ…ッ!」
 さらに力強く突き始めたアレルヤのからだの下で、ハレルヤが背を仰け反らせ、声もなくのぼりつめる。
 必死で酸素を求めるその口を、アレルヤは荒々しくむさぼった。
「…たりない…まだ、…たり、ない、よ…ハレル、ヤ…」
 アレルヤは、自身もハレルヤの奥へと残り少なくなった精を迸らせながら、それでもさらに奥へとからだを突きあげる。
 ペニスは萎える気配さえみせない。
「好き…、…好き…、ハレ、ルヤ、」
 ハレルヤの首の裏に両手を入れ、ハレルヤの両肩を両腕で押さえこみ、腰を圧しこむたびに揺れる顔を、金色の瞳を、見つめ。
「──ハレルヤ……ハレルヤ……」
「……ここに…いるぜ…」
「……ハレルヤ…ッ…」
「…だぁいじょぉ…ぶ、…だ、…」
 今にも途切れそうな意識を無理に起こしながら、ハレルヤは、まったくしょうがねぇなぁ、と目を細めて、アレルヤに微笑む。
「…オレは、…いつだって、お前と一緒に…いる、だろ……」
「…たり…ないん…だ、ハレ…ルヤ…ッ」
「…アレルヤ、…アレルヤ」
 低い、やさしい、ハレルヤの声。
 アレルヤの左目から、いくつもの大粒の涙がこぼれおちた。
「……ハレルヤ……ッ」
「……。わぁってる……」
「…ハレルヤ…ッ…ハレルヤ…ッ…──」
 嗚咽をもらすアレルヤの頭に、ハレルヤの右手が、そっと乗せられた。


 泥のように眠り、目を覚ますと、とんがり屋根の小さな窓から、光がさしこんでいるのが見えた。
 純白の羽根が、ひらひらと降ってきているように感じる。
 となりには、まだハレルヤが寝息をたてていた。
 昨夜は、抱きつぶすほどに抱いた。
 ハレルヤも自分も、からだ中の同じところが、キスマークと引っ掻き傷だらけだ。ヒリヒリと痛むのが、嬉しかった。
 時計に手をのばして、目覚ましを鳴る前にオフにする。
 穏やかな、天使のような、寝顔。
 アレルヤは、そっとその唇を指先でふれる。
 ハレルヤは、気がつかない。
 愛しい、愛しい、ハレルヤ。
 ぼくたちは、いつも一緒に。


 ハレルヤの寝顔をすこしの時間眺めると、アレルヤはベッドから降りた。
 顔を洗い、濡れた両手で前髪をかきあげる。
 鏡に向き合い、右の額の傷あとを、左目で、右手の指先で、確かめる。
「でかける時間だよ、ハレルヤ」
 ベッドにはもう、ハレルヤの姿はない。
「今日も一緒に、生きよう、ハレルヤ」
 鏡のなかの、金色の瞳、銀色の瞳。
 アレルヤの脳には見たものを伝えない、金色の右目。


 アレルヤは、ナイフと銃を服の中に隠し入れると、リュックを左肩に背負い、家を出た。



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