transparency
(4) ~*R18~
アレルヤは、いつからかロックオンの手を見ることに優越感を覚えるようになっていた。
シャワーを浴びているときと、セックスをしているときしか、ロックオンの手は見ることができない。
すなわち、ロックオンの素手は自分しか、見ることも触れることもできない、ということだ。
あんなにいつもロックオンの腕と脇腹に密着しているハロでさえ、ロックオンの手は黒いなめし皮のグローブでしか見ていないのだ。
ロックオンの右手を両手でそっと包むと、アレルヤはその人差し指にそぅっと口唇を寄せた。
おそらくロックオンのからだの中で、最も敏感なところだ。触れた瞬間、白いからだはぴくりと反応した。
ミクロの感覚で銃を操る、人殺しの指先。
なのに、とても美しかった。
爪は綺麗にヤスリをかけて整えられ、指の腹は思っていたよりもずっとふっくらとして柔らかく、外気に殆ど触れないからか、指の節も滑らかだ。
この指になら、撃たれても良いとさえ思えた。
全体的にしっとりとした感触を、手の平と口唇で味わうと、アレルヤは静かにロックオンをベッドへと押し倒した。
「すんのか?」
若干困惑気味に、ロックオンが問う。
「イヤだ?」
「いや、イヤじゃねぇけどさ…見えない相手とすんのは初めてだからさ…」
「うん、そうだね」
アレルヤの暖かい手が、ロックオンの肩からシャツをするりと落とした。その穏やかな動作に、ロックオンのからだからは力が抜けていった。
「アレルヤ…」
「うん?」
瞼を閉じると、そこに視線を感じる。
アレルヤはちゃんと、自分を見つめてくれているのだ。
「ぼくはしたいな」
まっすぐに響いてくる声に、ロックオンはちいさく頷いた。
すこし乾いた口唇に、暖かいアレルヤの指先が触れてくる。
「ロックオン、目を閉じないで」
「でも」
「できるだけ、ぼくがわかるように動くから、だから見ていて」
アレルヤに額を撫でられ、ロックオンはすこし恐れているかのように、ゆっくりと目を開けた。
「綺麗、ロックオン」
だから、そういうことを言うなよな──。
表情から読み取ったのか、アレルヤがくすんと笑う吐息が鼻先にかかった。
アレルヤが舌を絡めてくると、ロックオンはそれに素直に応えた。
こじ開けられた口は開きっぱなしで、舌も吸われて誘い出されている。
きっと、第三者がこの光景を見たら、アイツは一人でなにをやっているんだ? と思うだろう。
ロックオンは、いつもとは違う感覚を覚え、ガラにもなくキスだけで頬をピンク色に染めた。
やはり、すこし恥ずかしい。
だが、本当に恥ずかしいのは、これからだった。
アレルヤのキスが口から頬へ、耳から首筋へと移り、胸元まで滑っていくと、触感からアレルヤの場所を確認しようと頭を起こしたロックオンは、ギクリとして目を見開いた。
アレルヤの口のなかで様子が変わっていく乳首が、透けて丸見えなのだ。
アレルヤの舌が器用に絡みつき、尖った舌先が先端をノックする。乳首は充血して勃ちあがり、さらに敏感な性器へと変貌していく。
自分のからだの様子が克明に変化する様子を初めて目にして、ロックオンは一気に頬が熱くなるのを感じた。
「な…な…、おい…」
「どうしたの?」
「その…すげぇ恥ずかしいんだけどさ…」
「透けて見えるから?」
すこしくぐもったアレルヤの返事に、ロックオンは再び大きく目を開く。
「知っててやってんのかよお前は!?」
「うん…」
アレルヤの舌が、ゆっくりと、宥めるかのように乳輪を舐る。かすかに乳首の先端を舌のひだが掠めて、脳にとろけるような刺激が突き上げた後、腰がじっとしていられないほどに甘く疼いた。
両肘で上半身を支えながら、ロックオンは自分の乳首から視線をはずせない。
足の指が、脹脛が、太腿が、ひくひくと震え、シーツから踵が浮き始めてやっと、アレルヤはロックオンの右の乳首をチュッと音をたてて解放した。
「あ…あ、…」
「まだもうひとつあるよ」
「…い、いや、やめ──」
小刻みに震える手でアレルヤを止めようとするが、見えない男を、ましてやアレルヤを相手に、かなうわけもなかった。
パシンという音と共に軽い衝撃が走り、ロックオンの両手はシーツに簡単に押し付けられた。
「こっちも同じくらい舐めてあげるから」
左側の乳首に、見えない舌が巻きついてくる。
ロックオンは今度は自分のからだの変化を正視できずに、背を仰け反らせ、手首はシーツに沈められたままに、両肩を浮かせた。
アレルヤに突き出されるかのように反った真っ白な喉元で、ひくつく吐息と共に、喉仏がちいさく上下した。